2018年度の医学部の入学定員が発表されました
文部科学省は2018年度の国公立大学81校の医学部の入学者定員を発表しました。
近年増加傾向にあった医学部定員ですが、今回は2017年度定員9420人より1名だけ少ない9419名となっています。
ほぼ同数と言えますが、すべての大学で人数の変動がないわけではなく、むしろ大学ごとに見ていけばそれなりの変動があると言えます。
その細かい変動をトータルすれば合計人数がほとんど同じになったにすぎません。ここでは、医学部の入学者定員について述べていきたいと思います。
▼目次
1. 定員数の増加
1960年度には医学部の定員は2840人でした。
それ以降は徐々に増えていき、1998~2007年度は7625人で固定されていました。
しかし地方や過疎地域、離島などでの医師の不足が顕著になっていきます。
これは新たに医師になる人が自分が学んだ大学病院でそのまま勤務したり研究を続けることを希望することが多く、都心に医師が集中したためでもあります。
診察とともに研究を続けたい医師にとっては設備が整わない地方や離島などでは勤務できないのです。
そうして地方の医師不足を解消するために2007年に「緊急医師確保対策」が制定され、2009年度から定員を増やしていきます。
2009年度:8486人
2010年度:8846人
2016年度:9262人
2017年度:9420人
と増加してきたのです。
2016年度は東北医科薬科大学で100人、2017年度は国際医療福祉大学で140人の医学部新規開設もあったことが増員の大きな理由にもなっています。
定員が増加していることについて2019年度までは増加していく方針であると国は考えていますが、それ以降についてはまだ決定されていません。そこから減少していく可能性もあるために注意が必要です。
2. 国公立大学医学部が人気のわけ
やはり国公立大学医学部は定員が増加しているといっても入学は易しいものではありません。
その一番の理由は授業料などの費用であると言えます。
「医学部は授業料がとにかく高い」イメージを持つ人は多くいますが、あれは基本的には私立大学の医学部の話です。
私立大学の医学部では6年間に平均して3000~4000万円ほどの費用がかかるのに対して国公立大学医学部では6年間の費用が約10分の1の350~400万円ほどと言われています。
そのため家に金銭的余裕がある場合を除いては国公立大学医学部に進学することを希望する生徒が多くなるのは当然なのです。
また、近年「地域枠」を利用して定員を増加させている大学が多いことも特徴です。
「新医師確保総合対策」と「緊急医師確保対策」による臨時定員317名は2017年度で終了します。
その代わりに多く採用されているのが「地域枠」なのです。
地域枠は一般入試、推薦入試、AO入試などで割り当てられているもので、将来その地域医療を支える人材を確保することを目的とした制度です。
地域枠を利用して入学する学生は奨学金が給付されたり貸与されたりします。
そして卒業したら指定された医療機関で一定期間(だいたいは6年~9年)勤務します。
途中で辞めることなく一定期間を勤務することで、給付されていた奨学金の返済が免除されるというものなのです。
その地域の医療を安定させたい自治体と経済的援助を受けられる学生の考えが一致すればどちらにも有利な制度と言えるでしょう。
ただしこういった制度は誰でも受けられるわけではありません。
将来の勤務を約束する代わりに奨学金を給付するわけですから、成績優秀、まじめな態度が必要となります。
ここ10数年で急激に増えてきているAO入試などは完全にその対象となります。
これは一般的な年明けに行われる学力による入試ではなく、夏ごろに行われるもので、ほとんどの場合は「調査書」と「面接」で合格が判定されます。
調査書は高校三年の途中段階までの成績で出され、「保有している資格・免許」「特別活動」「評定」「欠席や遅刻の数」などが調査対象になります。
面接ではどの学生も自分の長所を伝えることはできますが、調査書の内容ははっきりとわかるものです。
そのためにAO入試を考えている高校生は高校生活の過ごし方が重要になると言えるでしょう。
特に欠席が年間に10日を超えていたりするとその「理由」を記さなくてはいけなくなります。
不明瞭な遅刻や欠席が多い生徒はそれだけで不利になると言えます。
こういった「地域枠」を利用しての入試は志願者数にもばらつきがあるために倍率が高くなったり低くなったりの差がうまれています。
自分が志望している大学の倍率には注意しましょう。
また、都心から離れた地方の大学を受験する場合は大変ではありますが、必ずオープンキャンパスなどを利用して実際に大学を訪れておくようにしましょう。
合格してからイメージと違うと感じたりすることもありますし、入試の面接などで「志望しているのに来校したことはない」というのは非常に印象を悪くします。
予約制のオープンキャンパスなどでは学校名や氏名が登録されますので参加しているかどうかはすぐにわかります。地方の大学ほど確実に訪れておくようにしましょう。
3. まとめ
医学部の入学定員はここ数十年で大幅に増加しています。近年も増加し続けていますが、数年後は減少していく可能性もあります。