学費だけではない国公立と私立の医学部の違い
今回は、国公立と私立の医学部の違いについてです。
入試において国公立大学と私立大学では違う特色があることはあまり知られていません。
その知識をしっかりと持っていなければ受験スケジュールを組み立てることもできません。
それぞれの違いを把握するために、ここではそれぞれのメリットとデメリットを順に紹介していきたいと思います。
▼目次
国公立大学医学部のメリットとデメリット
国公立大学医学部のメリット
まず国公立大学の最大のメリットは授業料の安さです。
だいたいの大学で学費が50万円~100万円までにおさまっているために卒業までの六年間で400万円~600万円の授業料となります。
これは医学部としてはかなり低い方だと言えます。
国公立大学医学部のデメリット
国公立の大学になりますのでセンター試験を受けることが必須となっており、5教科7科目を受験する必要があります。
そのため苦手科目がある場合などは合計点が低くなりがちで合格にはかなり厳しい条件になります。
このセンター試験を一次試験としてだいたい85%以上の正解率であれば二次試験に進むことができます。
しかも倍率は私立より低いものの、かなりの偏差値をほこるところが多く、実際にはかなり狭い門と言えます。
公表されている偏差値の一覧でもトップは国公立の大学がずらりとランクインしています。
また、この偏差値は「医学部受験生」が受けた試験での偏差値ですので、実際にはこの数字以上の難関であると言えます。
医学部受験生たちの偏差値60は一般の大学の学部の偏差値60とはまったく違うものだということを理解しておかなければいけません。
私立大学医学部のメリットとデメリット
私立大学医学部のメリット
一番大きいのは「試験科目が少ない」ことです。
国公立大学では5教科7科目すべてで高得点を取る必要があることと比べて私立大学では3教科が主流になっています。
そのため自分が苦手な科目が試験科目にないところを受験するということが可能となります。
また、国公立大学の医学部と比べると偏差値は少し低めになっています。
低いといっても当然一般の大学よりはかなり難関であるとは言えます。
10年ほど前から常に問題視されている医師不足を解決するために、政府は医学部の定員を増やす方針を打ち出しています。
そのためそれぞれの大学の定員が増えているということはメリットのように考えられます。
ただし実際には、定員が増えた分よりも希望者が増えているためにむしろ倍率は上がっていますので、それほどメリットにはなっていないのが現状です。
私立大学医学部のデメリット
私立大学のデメリットは非常にわかりやすく、「授業料」と「倍率」の高さです。
関東圏の大学の医学部の倍率を見ていくと軒並み10倍以上のところが埼玉医科大学のように約30倍という高倍率のところもあります。
こうなると偏差値はあまりあてにはならず、単純に「狭き門」だということになります。
医学部の定員増はあてにはできません。
私立大学でも地元の自治体の出資を受けている大学では「地域枠」を採用しているからです。
これは利用すると授業料が免除される条件として卒業後の数年間その自治体で勤務するというものです。
自分が希望する勤務先や研究を選ぶことができないために地方の地域枠も利用しづらくなっています。
また、最大のデメリットである「授業料の高さ」はかなり大きいものです。
比較的安いとされている順天堂大学医学部ですら六年間で2000万円ほどの授業料です。
平均しても4000万円前後、高い大学だと6000万円ほどかかるところもあります。
近年、それが問題視されて少し授業料が下がったとも言われていますそれほど一般の家庭ではかなり厳しい金額だと言えるでしょう。
私立大学の場合はこの授業料に加えて「施設利用費」「実習費」「寄付金」などの名目で他にお金がかかることも多くあります。
もちろん卒業が延期されると追加で数百万円の授業料が必要となります。
ここで高額の奨学金などを利用したことで後々経済状態が圧迫される学生もいます。
こういった理由もあって、たとえ試験科目が多くても国公立大学の医学部を希望するという学生も多くいるのです。
まとめ
授業料だけで考えれば国公立大学が、試験科目や偏差値を考えれば私立大学が良いということが言えますが、倍率の問題があるので、一概に私立大学に入りやすいということは言えません。
また、大学によって専門としているもの、実習設備などに大きな差があるのも事実です。
また、中途半端に決めかねていると本命の大学の試験には不必要な科目の勉強もダラダラと続けてしまうことになります。
それらの条件を踏まえた上で、実際にオープンキャンパスなどを利用して大学を見に行き、自分がやろうとしていることができるか、授業料などの問題はクリアできるかということを総合的に考えて志望校を決定していくのが良いと言えるでしょう。